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遺言の注意点

遺言を作成する際に大切なのはその内容です。形式的な要件(自筆証書遺言の場合の全文自署など)を満たすことは当然ですが、内容についても曖昧な表現にならないよう気を付ける必要があります。その他にも遺言を作成する際に気を付けなければならない点をお伝えします。

曖昧さを無くす

自筆証書遺言を使って登記をしてもらいたいというご依頼の場合、遺言の内容によっては登記できるかどうか判断に迷う記載に出くわすことが多々あります。具体的には、相続させたい財産がはっきりしていない場合や、相続人がはっきりしていない場合などが多いです。

 ex)「○○市の不動産」や「子どもたちに」など

このような記載だと特定が難しいため、形式的には有効な遺言であっても名義の変更には使えないケースもあります。

不動産については、登記事項証明書を取得し、所在、地番、地目、地積を明記するようにしましょう。未登記の建物などについては固定資産税評価証明書などを参考に記載するようにしましょう。また、預貯金については、金融機関名、支店名、種類、口座番号を明記し、特定できるようにします。人についても同様に、住所、氏名、生年月日、続柄でだれが見ても特定できるようにしておけば安心です。

予備的遺言

例えば、「全財産を長男に相続させる。」という内容の遺言を作成した場合、実際に遺言者が亡くなるよりも前に長男が死亡したときはどうなるでしょうか?ぱっと思いつく考え方は次の2つになります。
1.長男の相続人が代わりに相続する
2.遺言が無効になる

結論を申し上げますと、2になります。つまり、「長男に全財産を相続させる。」とした遺言は、もらうべき長男がいないので効力が生じないことになります。もし、遺言者の意思が、長男が先に死亡した場合には、その子(遺言者からすれば孫)に相続させたいと思っている場合は、「予備的遺言」をしておく必要があります。

予備的遺言とは、上記のようなケースを想定して、あらかじめ遺言に記載しておくことです。「長男に全財産を相続させる。」に加えて、予備的に「長男が先に死亡している場合は、長男の子○○に相続させる。」と遺言に記載しておけば、遺言者の意思を実現することができます。

遺言に記載のない財産は?

遺言に記載されていない財産は、法定相続となり、遺産分割協議が必要となります。遺産分割協議を不要とするために遺言書を作成するのであれば、漏れの無いように記載する必要があります。個別的な記載のほかに、「その他のすべての不動産」、「その他一切の財産」などで特定し、記載しておくことが望ましいです。こうすれば、遺言書作成の後に取得した財産についても遺言の効力が生じることになります。

相続人以外に財産をあげたい場合

相続人以外に財産を渡したい場合、遺言の作成は必須です。子が健在であれば、孫は相続人とはなりませんから、孫に財産をあげたいときは遺言を作成するしかありません。相続人以外に財産をあげる際には、「相続させる」ではなく「遺贈する」を記載します。「遺贈」とは遺言による贈与のことです。相続人に対しても、「遺贈する」と記載することは可能ですが、相続と遺贈では法的な効果も違ってきますので、相続人に対しては「相続させる」と記載しましょう。

遺言執行者の選任

遺言の効力が発生するのは、遺言者が死亡したときからです。遺言者の死亡後、名義変更などを経て、遺言の内容を実現していきます。この遺言の内容を実現させていく作業を行うのが遺言執行者です。最もわかりやすいのが、預貯金の解約や名義変更手続きとなります。

遺言を作成し、遺言者が亡くなったとしても、勝手に預貯金が相続人に名義変更されるわけではありません。金融機関に行って、手続をして初めて相続人の名義となります。遺言に従って預貯金の名義変更したり、解約する場合、ほぼすべての金融機関で遺言執行者の選任を求められます。あらかじめ遺言書の中で遺言執行者を選任しておかないと家庭裁判所に遺言執行者の選任申立を行う必要があります。遺言執行者を選任しない場合、おそらく相続人全員の実印の押印と印鑑証明書の添付を求められるため、遺言書作成する意味がなくなってしまいます。預貯金を対象とした遺言を作成する場合は必ず遺言執行者を選任しておきましょう。

※特定の相続人に不動産を相続させる場合、不動産の名義変更は遺言執行者の業務とはならず、相続人が単独で申請することができます。一方、「遺贈」を原因とする場合、単独の申請とはならず、相続人全員若しくは遺言執行者が関与しないと名義変更できません。

遺言の撤回

遺言の効力は遺言者が死亡するまで生じません。当然、亡くなるまでの間に気持ちが変わる、財産が変動するなどの事情によって、作成した遺言を破棄したい場合もあるかと思います。

第1022条(遺言の撤回)
遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。

条文にあるように遺言者はいつでも遺言を撤回することができます。「遺言の方式に従って」とありますので、自筆証書遺言または公正証書遺言と同様の方法により、遺言を撤回する遺言を作成することになります。また、遺言については、あとに作成されたものが有効となります。(日付が法定されているのはこのためです。)2通の遺言書があり、その2つが矛盾しているときは、後の遺言書によって、先の遺言書は撤回されたものとみなされます。自筆証書遺言の場合、遺言書そのものを破棄したときも撤回したものと同じことですが、公正証書遺言の場合、原本が公証役場に保管されていますので、破棄することはできません。公正証書遺言を撤回するには、必ず撤回する旨の遺言を作成する必要があります。公正証書遺言を自筆証書遺言で撤回することも可能です。